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心に痛い、ワナビあるあるの真っ黒小説「夢を売る男」

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百田尚樹「夢を売る男」太田出版

 

本屋大賞を受賞されました、百田尚樹さんの作品です。

「作家志望者は読んではいけない!」

あらすじ:丸栄社という出版社が行っているジョイント・プレスという出版方式。200万円払えば自分の本を出版できるという自費出版ビジネスだが、編集者・牛河原は自社の賞に応募し落選した様々な人間に、巧みな賞賛の言葉を述べて、本を出版させる。ベストセラーになれば200万円なんてすぐ取り戻せる、そう言われ嬉々としてお金を払う人々と「夢を売る男」牛河原のブラックコメディ。

 

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「自分でこんなことを言うのも何なんですが、なぜ、みんな簡単に僕たちの口車に乗って二百万円以上の大金で契約するんでしょう?」

「不思議か」

「不思議ですよ(略)」

「それはな」と牛河原は言った。「小説だからだよ」

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誰でも一度は考えたことがあると思います。

「本を書いてベストセラーになったら…」

自分が書いた物語を何万人もの人が読んで賞賛してくれる。お金も入る。そして後世にまで本は残る…そんなことあるわけないのに。

読んでいて「いるいるこういう人」と思ったり「あぁ、これ私のことだ」と思ったり…。

もし、私が小説を書いて、賞に応募して、牛河原さんから電話をもらったら、払うと思います、200万円。だって、もしかしたらベストセラーになるかもしれないんですよ?賞に出した作品を認めてくれる、賞賛してくれる編集者が現れたら…

そして本が実際に出版されるのです。

「もしかしたら私もベストセラー作家になるのかもしれない」

 私はこんなのようなことを想像します。

そう、この小説の主人公は、こんな風に、人々に「夢を売っている」んです。

200万円を払って皆、自分がベストセラー作家になるかもしれない、と夢を見るんです。

 

でもこれ、出版社は帯の裏文句を表にもってくるべきだと思う。

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小説なんて書いたこともない作家志望がごろごろいるんだから、こっちの方アピールした方が確実に売れると思います。

 

一度でも「ベストセラー作家っていいよなぁ」と思った方は読んでみるといいかもしれません。

出てくる文章が怖い怖い。

 

「毎日、ブログを更新するような人間は、表現したい、訴えたい、自分を理解してほしい、という強烈な欲望の持ち主なんだ。こういう奴は最高のカモになる。(略)」

これ本文中のp.212の牛河原の台詞です。

本当にその通りです。どうもありがとうございました。

 

百田尚樹さん、「永遠の0」「海賊と呼ばれた男」もいいですが、この怖い小説も是非是非読んでみてください。

さくっと読めます。

 

ちなみに百田さんこれ書いていて心が痛くなったのかわかりませんが、「百田何某はすぐに消える~」と登場人物に言わせていたりします。ほかにも「これ、多分あの作家のこと?」って思える人もちらほらいたりして…あぁ、ブラック!!!

 

明日からのGWのお供にでもどうぞ。一日でも読めると思います。