30 days to U.S.S Enterprise

7/19-スタトレ最新作公開まで、カーク(クリス・パイン)、スポック(ザカリー・クイント)関連の英語記事訳に 30days challenge

21世紀は人間の体でいられる最後の時代かもしれない

健康な手足をカットして、機械の体を手に入れることが流行になっている、そんな時代が来るかもしれない。もう、攻殻機動隊やSFの話は、遠い未来ではなく、私たちの手の届く範囲まで近づいてきています。
このドキュメンタリーは、少しでも多くの人に見てほしいです。


How to Build a Bionic Man (2013) - Documentary ...


「How to build a bionic man」
イギリスのバイオニック人間を作る過程のドキュメンタリーです。

一時期ニュースになっていたのですが、「バイオニック人間て何?」と思われた方にちょっと説明。

バイオニック人間とは:人口の臓器、血液、循環系が組み込まれて作られたロボット。
名前は「REX(レックス)」で、モデルは社会心理学者のベルトルト・マイヤー博士。
REXは歩きます、コップも持ちます、しゃべります、血液も流れています。つまり人造人間です。

このニュース、何がすごいってこのベルトルト・マイヤー博士は左手が生まれつき義手なんです。その博士が、人口の義手で、人工人間の顔をつかんで向かい合っている写真に衝撃を受けました。すごく美しいというか…完全な人工物、人間の一部の人工物、そして生身の人間という一連の繋がりに惹かれたのが、このドキュメンタリーを観たきっかけです。
(ちなみに意外とベルトルト博士、乙女ちっくで可愛い方です)

上のドキュメンタリーは47分程。それほど難しい英語でもなく、「レックス」を作る過程で何をしているのかは映像から伝わってくるので是非観てください。


※一応気を付けて何度か見直しましたが、英語を完璧に聞き取れているわけではないので、内容違いがあればコメントで教えてください。


このドキュメンタリー、レックスのために手、足、目、臓器、血液、脳、を手に入れていくんですが、その過程に出てくる最先端技術がすさまじい。

The Hand
まず手、博士の義手は高性能義手なので、とても細かい動きもできます。しかし博士がこの動画内で試すさらに新しい義手は、腕の少しの筋肉の動きで、手首の上下運動、さらに掌の開閉をも感知します。動画内で博士が試してみて、すごく驚いているんですが、その驚きが画面を通って伝わってくるので、ここは是非観てください。

The Leg
次に義足、個人的にここのパートが一番怖かったです。ここではロッククライミングの事故で足を失った義足の人が出てきます。彼は、いまだに義足でクライミングを続けているんですが、その彼の言葉が本当に怖かった。
「義足の方が成績が良いんだよ。もし、僕が生身の体に戻りたいかって聞かれたら、絶対にNOだね。生身の体はつまらないよ

信じられます?
私が怖いと感じたのはここです。

「生身の体はつまらない」

番組の台本だとか、元に戻れないからこういうしかない、とかそんなことじゃないんです。今まで私は当たり前に、手足を失うこと、手足がないことはハンデだと思っていました。義手や義足は、生身の体に劣っているし、それをいかに生身の体に近づけるか、というのが課題であり続けると思っていました。

だけど、もし義手や義足が生身の体に近づくだけでなく、それ以上のことができるようになってしまったら?

博士の高性能義手は、手首は360度回転します。ロッククライミングの人は、義足の方が成績がいいそうです。


もし、将来、生身の体を切ってまで、義手や義足を手に入れたがる人が出てきたら?ありえないでしょうか?だってお金を払えば、今の自分の能力以上の手足が手に入るんですよ?自分が手に入れるだけでなく、もし、強力な力を持った手足を、ふさわしくない人が手に入れてしまったら?


さらに動画は続きます。

The Eye
盲目の人の目にチップを入れて、特殊な装置を付けることで形が認識できるようになります。これは目が見えるようになるのではなく、あくまで形が信号で送られてくるんです。盲目の人が目が見えるようになるのはとても素晴らしいと思いました。ただ、技術がこれより進歩して、目がよく見えるように皆がチップを入れだしたら…?それこそ、「私が見ている世界はホンモノなのか?機械が見せているのではないか?」という風に哲学の現象学が、現実問題に変わってしまうかもしれません。

The Brain
そして、衝撃、頭にケーブルの刺さったラットもちろん生きたまま。これ、アルツハイマーの治療の研究みたいです。アルツハイマーになる前のラットの行動をチップに記憶する。アルツハイマーを発症しても、そのチップを脳に埋めれば、依然と変わらない行動がまたできるようになる、というもの。でもそれって、治療なのかな?チップを埋め込んだ人は、たとえ依然と同じ行動ができても治ったといえるのかな?

博士も「あのさ…それって、<すべき>ことなのかな?」と聞いています。その問いに対する答えが「I don't know(いや、分かんないですよ…)」です。

これってすごく怖いことだと思うんです。もちろん技術が進むのはとても素晴らしいことですよ。だけど、そこに私たちの倫理が追いついていかないんです。与えられる新しい技術が人間にとって何を意味するか、それを手にしたことで何を失うか、検討をする暇もないのはとても恐ろしいことだと思います。

ここで紹介していることは、いつか実用化されるかもしれません。私たちはただ新しい技術を与えられるのを待っているだけじゃなく、その技術が人間に何をもたらして何を奪っていくかを考えなければいけないと思います。私は最初に、攻殻機動隊やSFの話は、私たちの手の届く範囲に来ているといいました。しかし、むしろ、その未来が私たちに向かって手を伸ばしてきているんではないでしょうか。救いの手だとは限りません。それは私たち自身にかかっていると思います。


脳以外のすべてが人工の機械に変わったとき、その人のことは人間と呼べるのでしょうか?心臓、肝臓、体の中身が大半機械に変わったとき、私は自分自身ことを人間だと信じられるでしょうか?
アルツハイマーになったとき、チップを埋め込んで、元の生活ができる自分は、本当に自分でしょうか?

かつてないほどの勢いで技術が進化している今だからこそ、個人の倫理観を大事にしなければなりません。



将来、攻殻機動隊の世界のように、ほとんどの人が体の一部を機械に替える時代がきたとしたら。
大事な人を抱きしめた時、誰かの手を握ったとき、それが生身の体であるのは、私たちが生きている時代が、最後になるかもしれません。